Case01
プロジェクトのキックオフ会議
<Aさんのケース>
会議名称 :社内DXプロジェクトのキックオフ会議
参加メンバー:多部署から集められた中堅社員10名
所要時間 :120分
数か月の準備期間を経て「社内DXプロジェクト」が今月からスタート!
私がプロジェクトリーダーを任されてしまった。部署を横断したリーダーは初めてで、うまくプロジェクトを遂行できるか心配だ。各部署から横断的に集められたプロジェクトメンバーは、他の仕事が忙しいので余計なことはしたくないと一歩引いた姿勢が既に想像され、どうまとめればいいのか。。。
最初の顔合わせになるキックオフ会議では、プロジェクトに対するメンバーの意欲を高めつつ、今期の具体的な活動内容を決めていきたい。
進め方のポイント
①プロジェクトの目的・ゴールを一方的に伝える前に、メンバー個々人の気がかりや問題意識が吐き出され、見える化できる状態をつくる
②問題を解消させるのではなく、それがどんな状態になるとプロジェクトに参加した甲斐があったと思えるのか、未来志向の理想的な状態を話し合いで決める
③理想の実現に近づくように具体的な行動を決める
SOUNDカード™の基本動作
カードを並べて選ぶ
選んだカードについて話す
ミーティングの流れ
会議が開催される背景や目的・ねらいを共有する
趣旨説明
(5分)
DXプロジェクトが立ち上がった背景や、メンバーで話し合う機会を持つことによって何を可能にしようとしているのか等について紹介し、話し合いの方向性を提示します。
簡単な自己紹介と今の正直な気持ちを一言ずつ話す
チェックイン
(10分)
通常、会議では主催者が挙げた議題に従ってすぐに検討に入ろうとしがちになります。プロジェクトの立ち上げ時であればあるほど、議題に即座に着手すると、様子見姿勢、指示待ち態度を強化しやすくなります。一人一人を尊重しあう雰囲気をつくるためにも、率直な気持ちを語ってもらう機会をつくります。
Step00
Agenda
(5分)
会議のアジェンダ(議題)を決める
何を話し合うのか、何を決めるのかが不明確な会議は、議論がまとまらずに話が進み、参加メンバーからは無駄な時間と感じやすくなります。一人一人の発言が的を射た内容にするためにも、話し合う内容を決めることで、会議に取り組む姿勢を形成しやすくします。
Step01
Status
(15分)
現状の見える化と安全な場をつくる
メンバーが感じている問題意識は一人一人で異なることがあり、個々の問題を解決しようと議論が散逸しやすくなります。一つ一つの問題を解消しようとせずに聴くことで、一人一人の問題意識を共有できるだけでなく、会議の場が思ったことを言ってもいいという心理的安全性を高めます。
Step02
Outcome
(20分)
実現したい共通のビジョン(理想像)をつくり出す
問題に焦点が当てられている状態で議論を進めると、メンバー自身や自部署を守ろうという姿勢が強くなり、議論が行き詰まりやすくなります。問題に焦点を当てるのではなく、問題を解決した先にどんな未来を実現したいのかに起点を置いた活動ができるように、未来志向型のステートメントをつくります。
Step03
Understand
(25分)
プロジェクトの肝となるねらい目を見極める
プロジェクトが全社を巻き込んだものであることから、施策に対しての理解が得られなかったり、想定外の悪影響が生じる可能性があります。実際の取り組みをより効果的にするために、環境や制度、意識や業務状況など、現状と理想の間に何がギャップを生んでいるのかを明確にし、ターゲットとなるポイントを絞ります。
Step04
Negative Check
(10分)
施策の妨げになる要素を洗い出す
Understandで見出した方向性を進めていく上で、考慮に入れておいた方がよいことや、先手を打っておく方がよい事項の洗い出しを行います。周囲への影響を考慮に入れることで、配慮のある対応が可能になり、施策のソフトランディングが可能になります。
Step05
Drive
(20分)
実際のアクションを選定し実行する
ここまでの検討で見出した方向性を現実化していくために「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」を明確化し、実行に移せるようにします。
チェックアウト
(10分)
会議の振り返りとハーベストを共有する
会議の中では議論の内容・決定事項や、目立った発言をした人などに意識が奪われやすく、一方で思っていることをちゃんと言えなかった人や、発言は少なかったけれども色々な発見があった人などがいます。そうした個人的な感想や学びを共有する時間を設け、お互いに意識を向けあえるようにすることで、個々人を相互に尊重している雰囲気をつくれるようにします。
部署横断型プロジェクトチームの特徴
1.専門性重視で集められたプロフェッショナル集団
プロジェクトメンバーが専門性重視で集められたプロフェッショナル集団の場合は、他のメンバーが話している内容をイメージできなかったり、自部署の利益やメリットを優先で考えてしまったりする傾向が生じやすくなります。なぜなら、専門としていない業務や他部署での経験が少ないので、限られた範囲での判断になりやすいからです。このため「この人はわかっていない」や「あの人は自分のことしか考えていない」という思考になりやすく、協力し合う雰囲気が生まれにくくなります。
プロジェクトリーダーは、まずメンバー同士の業務の状況や、状況の捉え方の違いが浮き彫りになるように働きかけることが重要です。それにより、お互いの違いがすれ違いの種にもなれば、イノベーションの源にもなりうるという共通認識を育むことが可能になります。
2.全社を巻き込むプロジェクトゆえの構造的問題
「社内DXプロジェクト」のように全社を巻き込んだ業務改革など、大きな影響を与える意思決定を求められるのも部署横断型プロジェクトの特徴です。部署横断プロジェクトは、既存業務への影響が大きくなりやすいので、多くの部門からの理解や協力を得る必要があります。部署横断プロジェクトの経験が浅ければ浅いほど、各部署にお伺いを立てるような立ち回りになってしまい、調整が行き詰まりやすくなります。こうした状態を抜け出していくには、このプロジェクトで何を実現したいのか、未来に向けた理想を話し合って決めることで、部署の壁や一人一人のメンバーの立場を超えてでも実現しようとする雰囲気をつくるようにします。
プロジェクトリーダーは、会議やプロジェクト自体のやりがいを持ち続けられるように、常に目的や理想のビジョンを明示すると良いでしょう。
3.トップダウンで集められたメンバーたち