Case05
年上部下との個人面談
<Eさんのケース>
会議名称 :上司と部下の1on1ミーティング
参加メンバー:同じ部署の40代マネージャーと50代ベテラン社員
所要時間 :60分
半年前にマネージャーに昇進しましたが、私よりも年上の部下:Fさんについて悩んでいます。Fさんは、人生100年時代の中で、どう考えても知識やスキルが陳腐化していくのは明白なのにも関わらず、自ら学ぼうとする姿勢がほとんど見受けられず、目標や課題意識を持たずに毎日を過ごしています。
上司という立場上、何もしないわけにはいかないのですが、私もどう接したらいいのかわからず困っています。我が社では1on1ミーティングの制度があり、Fさんのモチベーションが上がるきっかけになればいいのですが。。。
進め方のポイント
①昇進の可能性が無くなったベテラン社員は仕事でモチベーションを回復しにくいので、上司として関わるのではなく、管理職の仕事に悩んでいる一個人として、人生の先輩に相談にのってもらうなど工夫して向き合う
②具体的に何を期待したいのかを明確にして、時には耳の痛いようなことも率直に伝えた上で、お互いがしっかり合意できるまで話し合う
③仕事の進捗状況に対して、さりげなく声をかけながら確認し、時には毅然とした態度で接するようにする
SOUNDカード™の基本動作
カードを並べて選ぶ
選んだカードについて話す
ミーティングの流れ
今の正直な気持ちを簡単に話してもらう
チェックイン
(2分)
もともと1on1ミーティングは、上司が部下と何を話したら良いのかわからず、単なる業務報告の機会になりがちです。さらに年下上司と年上部下だと、上司からの遠慮や腫れ物に触れずという雰囲気が部下に伝わり、ますます表面的な会話になります。まずは上司からこの時間をどんな時間にしたいかを率直に伝え、年上部下を厄介な存在ではなく一人の人として関心を寄せながら、リラックスして正直な気持ちを出し合える雰囲気がつくれるように心がけることが大切です。
Step00
Agenda
(3分)
ミーティングのアジェンダ(議題)を決める
やる気のある年上部下の場合は、何が今の重要課題か、上司として何を見落としていると思うかを率直に聞かせてほしいと意見を求めるようにします。一方、やる気を失っている年上部下の場合は、表面的な課題しか述べない可能性が高いので、上司がアジェンダとなる課題の候補をいくつか出し、「私はこれが課題だと思っているが、●●さんからみて他に課題だと思うことはないか?」等と聞きながら、どれを優先して話し合うのかを一緒に決めるように働きかけます。
Step01
Status
(10分)
問題の見える化と安全な場をつくる
やる気を失った年上部下は、会社や職場の問題を評論家姿勢で語る可能性があります。上司は、部下が挙げた問題に対して、そう思うに至った具体的なきっかけや出来事を聴きながら全て箇条書きにし、部下自身の発言に責任感が生まれるようにします。その上で「他にはないか?」と何度か繰り返して、全て出し終わったところで「箇条書きリストを見てどう思うか?」と投げかけることで、これなら取り組んでもいいかと思える状態をつくります。
Step02
Outcome
(10分)
部下が実現したいビジョンを引き出す
やる気を失った年上部下は、理想の未来を無理やり描かせようとしても乗ってこない可能性があるので、通常のビジョニングというより、どんな状態になると課題が解決したと言えるのか、何をもってうまくいったと判断できるのかを言語化してもらえるように促します。
Step03
Understand
(15分)
ビジョンの肝となるねらい目を見極める
年上部下本人が「これなら自分がやる」と、自ら言える状態を目指すことが何より重要です。ここまで話してきたことを踏まえて「何から手がけたら良いと思うか」について上司が後輩として教えを乞う姿勢を取りつつ聞き役に回りながら、部下の口から語ってもらうように促します。
Step04
Negative Check
(5分)
抵抗要因を洗い出す
年上部下と決めたねらい目を遂行していく上で、どんな抵抗要因がありそうかを一緒に洗い出します。その中で、上司として自分が引き受けられることを明確に決めることで、上司自身も課題解決の一翼を担っている姿勢を示し、お互い相手に迷惑をかけないようにしようと、部下が約束したことはやろうという気持ちを醸成し、この流れを繰り返すことで、部下が上司に協力したいという気持ちを徐々に芽生えさせます。
Step05
Drive
(10分)
実際のアクションを選定し実行する
ここではアクションアイテムを細かく決めるよりも、何をいつまでに取り組むのか、期限を決めることが効果的です。部下自身がやりやすいやり方で進めてもらう前提で、場合によっては、進捗確認も含めて上司がどんなふうにサポートすると良いのか、話し合って決めます。
チェックアウト
(5分)
ミーティングの振り返りとハーベストを共有する
できる限り、お互いがお互いを率直にフィードバックし合えるような仕組みが有効です。例えば、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックをそれぞれ言い合う等の枠組をつくります。この枠組によって、特に上司は年長者である部下からビシッと言ってもらいたい、その代わり上司からも言いたいことは言わせてもらう、という関係がつくりやすくなります。フィードバックが終わったら、最後に感謝と承認の言葉をお互いに伝え合うことも大切です。
年齢が逆転した上司部下関係の特徴
1.仕事では上がらない部下のモチベーション
何かしらの理由で昇進の可能性が無くなったベテラン社員のモチベーションダウンは、仕事の中で回復しにくい傾向があります。変化の激しい社会状況の中で、ベテラン社員が培った過去の経験が役に立たなくなりやすく、新しい知識やスキルを覚えることにも気力を使います。そんなベテラン社員は、年下の上司が自分のことを「無力なやつ」と映っているのではと思いやすく、関わり自体を避けるか表面的にその場を取り繕うようになりやすくなります。
上司はベテランの部下に対して、仕事の上司としてだけで関わるのではなく、例えば管理職になりたてで悩んでいる一人の後輩が、先輩に相談するように関わります。ベテランの部下を一人の人として尊重しながら、部下のことを受け入れているという姿勢をつくると良いでしょう。
2.形骸化する1on1ミーティング
社内のコミュニケーション改善として1on1ミーティングが導入されたとしても、導入前に比べて上司部下の関係性が良くならないことがあります。これは、上司側からも部下側からも今さら1対1で何を話せば良いのかわからず、間を埋めるように単なる業務報告がなされることがあるからです。特に年下の上司と年上の部下となると、上司からは年長者に対しての言いづらさや、腫れ物に触る感じがあり、部下からはそんな上司の雰囲気を感じ取って、余計に話し合いが表面的になりやすくなります。
1on1ミーティングでは、部下のやる気の有無によって、上司として見落としていることがないか意見を出してもらったり、一緒に課題を設定し取り組むきっかけにしたりと、部下だけでなく上司も成長し、人と人との関係性が深まる機会になるよう、意識的に働きかけます。
3.実行されない部下のアクション